第14章 奇行種の妙案
ハンジのプレゼントを用意するには、とある場所を借りなくてはならない。クレアは今のうちに使用許可を取るため、朝食の前にその場所に急ぎ、責任者の許可を貰いにいった。
無事に許可を貰えると、一安心したように朝食に向かう。
今から夜が待ち遠しくてしょうがないが、ハンジに怪しまれては元も子もない。
一生懸命に平静を装いながら行動するが、その日の訓練はいつも以上に気合が入りまくってしまったことは言うまでもなかった。
──夜──
クレアは兵士たちが夕飯を終え、食堂が少し空きだすタイミングを見計うと、昨日買った大きな紙袋を抱えて調理場に向かった。
「調理場の皆さん!使用許可をありがとうございました!お仕事の邪魔はしませんので、少しの間お借りします。」
そう、クレアが今朝使用許可を貰いに行ったのは調理場だった。
どうやらハンジへの贈り物は何か手作りのもののようだ。
「オーブン使う時は教えるから言ってね!」
「こんなに材料買ったの?」
「ハンジ分隊長も幸せ者だなぁ。」
などと、最初はみなクレアに興味津々に話かけていたが、作業が進むにつれて、段々と出来上がってくる物をみると……
「それ…食べられるのかい?」
など、みな怪訝な顔になり、クレアに話しかける者はいなくなってしまった。
しかし、そんなことはおかまいなしといったクレアはハンジのために小さい身体で一生懸命作業を続ける。
そして2時間がすぎた頃…
「やったぁ!できた!」
額の汗を拭う表情は満足げで、その様子から察するに、出来栄えは申し分ないのであろう。
クレアは出来上がった物を大きいトレーに並べて、大判の薄いクロスをかけて中がわからないようにすると、調理場を片付けお礼を言い、執務室にむかっていった。
大きいトレーを両手で持って、落とさない様に慎重に歩いていると、リヴァイの執務室の前で、エルヴィンとリヴァイが立ち話をしているのが見えた。
「団長、リヴァイ兵長、お疲れ様です!」
「やぁ、クレア、お疲れ。これからハンジの部屋に行くのかい?それにしても大荷物だね。」
「はい、今日はこれからハンジさんの所に行きます。」
「その両手に抱えてるのがハンジのプレゼントか?」
リヴァイは眉間にシワを寄せながら聞いてきた。