第14章 奇行種の妙案
「あ、アホ面とは失礼です…へ、兵長は今日ハンジさんの誕生日って知ってましたか?」
「あぁ、知っているが?」
「実は昨日、モブリットさんとハンジさんの誕生日のプレゼントを買いに出かけてたのですが、いいアイデアが浮かんでしまって……今夜を楽しみにしているのを必死に抑えてました……それなのに、アホ面をさらしていたなんて…恥ずかしいことこの上ないです…」
「そうだったのか。」
そんなこと、聞かなくても知っている。
昨日の夕方、たまたまモブリットとクレアが荷物を抱えて兵舎に戻ってくるところを目撃していたのだ。
クレアの口から自分以外の男の名が出るのも気にくわないリヴァイであるが、モブリットとあれば話は別だ。
モブリットはハンジ崇拝者というよりは、骨の髄までハンジの毒が染み込んだ、もはやハンジから離れられなくなってるようなヤツだ。
そしておそらくは個人的な感情には蓋をして、敬愛や忠誠心を貫いている。
ハンジと同じく長い付き合いのモブリットのこともリヴァイはよく理解していた。
ことに昨日は休日で、ハンジの誕生日の前日。
あの荷物を見れば、誕生日の買い出しをしていたのだと容易に想像がつく。
「で、お前たちは何を買ったんだ?」
奇行種クレアがハンジに選んだ物にリヴァイは興味があったが、返ってきた返事は予想外のものだった。
「絶対秘密です!機密情報なので、ハンジさんに渡すまでは誰にも言いません。あ、フレイアには言っちゃいましたけどね……」
女から隠されると余計に知りたくなるのが男の性だ。
「なんだよ。俺にも言えねぇのかよ。」
少し詰め寄るが、今日のクレアはなんだか強気だ。
「今は言えません。もしよろしければ、今夜ハンジさんの執務室にいらしてください!一緒に乾杯しましょう。」
「……考えておく。」
「あぁ!!兵長すみません!今朝はちょっと寄りたいところがあるのでこれで失礼します!」
いきなり立ち上がると、クレアは片付いた書類をトントンと丁寧にまとめて、リヴァイの返事も待たずに敬礼をして出ていってしまった。
「何なんだよいったい…」
今朝のクレアは頭の中がハンジで一杯で、リヴァイは少し面白くなかった。
柄にもなくハンジに嫉妬している自分が悔しくて盛大に舌打ちをした。