第13章 奇行種、ハンジと入浴
「……エッチなお店に消えていくのは団長とミケさんだけってことは、いつもモブリットさんと兵長と3人で帰ってたってことですか?」
「そうそう!モブリットにも何度かエルヴィン達に連れてってもらえって言ったことあるんだけど、あいつも頑固に行こうとはしないんだよなぁ…」
そう言って笑うハンジの瞳は微かに憂いを帯びているのにクレアは気がづいた。
「ハンジさんはモブリットさんに娼館にいってもらいたいんですか?」
「行ってもらいたいっていうか、いつも私の副官としてアレコレ拘束してしまってるからね。たまには男としての息抜きも必要だろうと思ってさ…」
「…潔癖症の兵長が行かない理由とは少し違いますが、モブリットさんは絶対に娼館には行かないと思います。ちょっと悔しいですが、ハンジさんに対するモブリットさんの敬愛ぶりは、ウォールローゼの壁より高いです。それに…モブリットさんがハンジさんに抱いてるのは敬愛だけではないような……」
「クレアは……自分のこと以外には、鋭いのかな?」
ハンジは苦笑いだ。
「え?ってことはやっぱりモブリットさんはハンジさんのこと…好きってことですか?」
「多分ね。」
「ハンジさんも同じ気持ちですか?」
「いいや、モブリットは大事な仲間で部下で、信頼している副官だ。だけど、それ以上ではない。私は残念ながら自身の恋愛には興味がないんだ。私の頭の中の興味関心はいつだって巨人のことだ。モブリットもそれは十分にわかってるから何も言ってこないんだよ。たいした忠誠心だよね…」
「そんな……」
「だから、私もモブリットの気持ちには気づかないフリをしているんだ。むこうが私のことを理解してるから何も言わないのに、私が気づいちゃったらモブリットの想いを台無しにすることになるだろ?気づいてないフリをするのも上官の役目だと思ってる。でも、きっとモブリットのことだ。きっと私が気づいてないフリをしてることにも気づいてるかもしれないけどね…」
「………………」
おそらく、ハンジの言ったことにはずれはないだろう。
クレアもまだ入団して日は浅いが、モブリットから溢れる敬愛の想いはとても深いものだ。
お互いに想いを伝えたわけではないのに、ここまで相手を理解できるなんて…
想いを繋げる恋愛とはまた違った愛の形が見えたように感じた。