第13章 奇行種、ハンジと入浴
不貞腐れながら浴室に入ったクレアであったが、ハンジの洗髪を手伝い始めると、あまりの手強さにまたメラメラとやる気を取り戻してきていた。
「もうハンジさん!いったい何日お風呂サボるとこんなになるんですか?全然石鹸泡立たないし髪もとけません!」
クレアは石鹸をつけながら容赦なくゴシゴシとするがまったく泡立たない。
「あわわわ!い、痛いよクレア!!まじで痛いから!」
「辛抱してください!」
「ひぃぃぃ………逆パワハラだぁ…」
「このまま放置してたらまわりからスメハラとか言われちゃいますよ!」
今まではどちらかというとクレアはハンジには甘いタイプに見えたが、壁外調査から帰還して1人前となったことで自信がついたからであろうか。
なんだか手のひらを返したように意見をはっきり言うようになったように感じる。
自身の上官相手なのにお構いなしだ。
リヴァイ風に言うと「さすがは奇行種だな…」とういところだろうか。
モブリットは色々と説教はするが、結局は男なので風呂に入れと言われても、はいはいと流せていた。
しかしクレアは同性であるため今後はそんな誤魔化しは通用しないだろう。
ハンジはこれから風呂に関してはクレアの厳しい指導が入りそうだと思うと少し気が重くなった。
お互い一通り洗い終えると、湯船につかってやっと一息だ。
「はぁぁぁ!気持ちいねぇ!」
ハンジが両腕を上げて、う〜んと伸びをすると
「気持ちいいならちゃんと入ってくださいね!」
厳しいツッコミが入った。
「入ったら入ったで気持ちいいんだけど、いつも実験とかを優先させるあまりお風呂は後回しになっちゃうんだよね…アハハ…」
もう苦笑いをするしかなかった。
なんとも気まずい苦笑いが響く深夜の大浴場にはハンジと2人きり。
クレアはふとハンジに言わなくてはならないことがあったと思い出す。話すのであれば今しかないだろう。
「あの…ハンジさん…」
「ん?なに?」
クレアは急にかしこまった表情になっている。
いったいどうしたのだろうか。
「私、ハンジさんのこと、初めて会った時から大好きです…心から尊敬しています。私も早くモブリットさんの様な副官になりたいです。」
クレアは柔らかい表情で、ハンジへの敬愛の想いを伝える。