第4章 懇願
翌朝2人は早くに出発し、訓練兵団を目指した。
早朝に出発したため、訓練兵が朝食で食堂に集まっているタイミングで到着することができた。
蹄洗場に馬をつなぎ水と飼い葉をやる。
鞍をはずすとうっすらと汗ばんでいて湯気がたった。
軽くタオルでふいてやり、まわりに誰もいないことを確認すると、裏口から来賓部屋へと急いだ。
「ふぁー!寒いし疲れたー。誰にも見つからなくてよかったね!」
「あぁ、まったくだ…」
荷物から特別に作ってもらったサンドイッチをとりだし簡単に朝食を済ませると、キース教官がやってきた。
「リヴァイ、ハンジ、よく来たな。今日の訓練は午前中が対人格闘と馬術、午後が立体機動を使った森の中での訓練だ。くれぐれもみつかるんじゃないぞ。」
「それはわかっている、ところでコイツに執心の奇行種とはどんなツラだ。」
「クレア・トートは1番小柄で腰までの髪を1つにしばっている。見ればすぐにわかるはずだ。…では頼んだぞ。」
キース教官がでていくと、リヴァイたちも身支度をすませ、訓練兵に見つからないよう訓練場に向かった。
いよいよ奇行種とのご対面だ。
二人は訓練場から少し離れた木の上に登り、双眼鏡を使って訓練兵の姿を1人1人確認する。
「長い髪…長い髪…あっ、リヴァイいたよ!右端の方にいる子、クレアじゃない?ずいぶんちっちゃいねー!」
「あぁ、あいつで間違いないな…」
リヴァイは少し動揺していたがハンジに気づかれない様に、冷静を装って答えた。
クレアは訓練兵のなかで1番小柄で、艶のある蜂蜜色の長い髪を紅い革紐でしばっている。
少し憂鬱さが伺える伏し目からは蒼い瞳が垣間見え、長いまつ毛が上下に揺れていた。
兵服など着ていなければ、まるでビスクドールのような出で立ちだ。
想像していた容姿とはだいぶ違ったが、このビスクドールのようなクレアがどんな奇行っぷりを見せてくれるのか、リヴァイは興味がわき始めていた。