第13章 奇行種、ハンジと入浴
訓練が再開されて2週間程がすぎた。
朝はリヴァイの執務室でできるかぎり仕事を手伝い、日中はエルドの指揮での訓練。
夜はハンジの執務室で精製や研究などを日付が変わるあたりまでみっちりと手伝う。
壁外調査の前と後とではガラッと変わった1日のスケジュールに最初はさすがに疲労がでたが、そこは奇行種クレア。
2週間もすぎる頃には身体もすっかり慣れ、疲れた顔も見せなくなっていた。
少し余裕が出てきたクレアは、なんとしても実行したいことがあり、このところは仕事をこなしながらコソコソとチャンスをうかがっていた。
時刻は夜の11時半。
いつもより少し早めに仕事のキリがよくなった。
「今日は少し早いですが、この変で終わりにしましょうか?」
黙っているとハンジは次の実験やら研究やらの準備を始めてしまうため、モブリットは先手をうって声をかける。
普段はハンジの気の済むまで付き合うクレアだが、今日は少し事情が違った。
「えー、まだもう少しいいじゃ………!」
「ハンジさん!!」
モブリットさん!その言葉、待ってました!
とばかりにクレアはハンジの言葉を遮る。
「え?クレア?」
「ハンジさん!少し早いですが今日は終わりにしましょう!そして、私とお風呂入りに行きましょう!」
「え?えーーー?!この間入ったよー……」
ブーブーと口を尖らせ心底嫌そうな顔をするが、今日のクレアはハンジを甘やかす気はなさそうだ。
「ハンジさん!最後に入浴されたのいつですか?失礼ですが、髪の毛がテラテラ黒光りしていて非常に気になります!」
「なんだよー!テラテラ黒光りって、人をゴキブリみたいに言うなよぉ……」
「私は壁外調査から無事帰還して1人前になりました。しかし当然ながら、まだ私は新兵です。仕事のこなし方などは副官であるモブリットさんの足元にも及びません。なので、考えに考えた結果、僭越ながら今日から私がハンジさんのお風呂担当をさせて頂きたいと思っております!」
「えぇぇぇーーー!!」
多少の不衛生くらいは目をつぶるが、ハンジは徹夜で燃料切れを起こした翌朝くらいにしかシャワーを浴びない。
毎日着替えをしているかも不明なところだ。