第12章 奇行種の休日
兵長は何か勘違いをしている。
すぐにでも弁解したかったが、それにはエルドとフレイアとの関係を話さなくてはならない。
いくら上官といえど、第三者の自分が勝手に話してよいものなのだろうか。
クレアは返答に困ってしまった。
「おい、なんとか言え。」
沈黙が続けば続くほど肯定を意味している様で、リヴァイは焦燥感にかられてしまう。
クレアはしばし迷ったが、このままエルドと付き合っていると勘違いされても困るし、2人にも迷惑がかかってしまう。
白状するしかなさそうだ。
「兵長…私はエルドさんと付き合ってはいません。エルドさんが付き合っているのはフレイアです。こんなこと、私の口からはとても言いにくかったのですが…」
「あぁ?」
クレアからの返事は思わず拍子抜けしてしまうものだった。エルドはクレアとではなくフレイアとくっついていたのだ。
まぁ、よくよく考えればこういうパターンも当然ありえることだ。
しかし、エルドがフレイアの様な女が好みだったとは…長く上官をしていても意外に知らないことがあるもんだと、リヴァイは少し複雑な気持ちになった。
「そうだったのか…勘違いして悪かったな。」
少しバツが悪そうに掴んでいた両腕を開放すると、何事もなかったかのように仕事を再開させた。
リヴァイとて、部下と女の取り合いなど決してしたくはない。
内心はホッとしていた。
「それじゃあ昨日は何をしていたんだ?」
少し張り詰めてしまった空気を元に戻そうと、書類に目を向けたまま話を続ける。
クレアはあまりにもあっけなく開放された両腕に、妙な寂しさを感じたが、今のやりとりでリヴァイの不機嫌オーラはいくぶんか弱まっているように感じた。
怒ってはいなさそうだ。
「昨日は珍しく寝坊をしてしまって……目が覚めたら正午でした。予定も特になかったので、午後はずっと一人で街にでて買い物をしてました。」
「お前が昼まで寝坊か?珍しいこともるもんだな。」
一昨日は遠出、昨日は寝坊と外出。
兵舎で見かけることができなかったのも当然だなと、リヴァイはやっと納得がいった。
「新兵の給料で何か買えるものはあったのか?」
「は、はい。無くなりそうだった香油を買ったのと……」
ここまで話したところで、クレアの胸元がソワソワとざわめき出した。