第12章 奇行種の休日
リヴァイはクレアの頭を撫でながら労った。
「あ、ありがとうございます……」
リヴァイは怒ってなどいなかった。
それだけではなく自分の安否も心配してくれていた。
それは戦績を褒められた以上に嬉しい。
クレアは顔が赤くなっているのを悟られない様にうつむきながら礼を言った。
一方リヴァイはクレアの姿を見ることができなかったのはたった2日だけのこと。
しかし、手のひらから伝わってくる感触はとても懐かしく、やっと触れることができたような感じがした。
しっとりと艶のある感触がとても心地よく、いつまででも触っていたい気分にさせられるがそうもいかない。
仕事が山積みだ。
「湯を沸かしてるのか?そういや、無事に帰還したら俺と仕事がしたいと言っていたな…望み通り用意してある。遠慮はいらん。好きなだけやっていけ。」
リヴァイは机の上の書類の山に向かって目配せをした。
お互いの誤解がとけたとわかるとリヴァイはいつもの調子を戻したようだ。
口元の笑みになんだか悪意を感じる…
「は、はい……すぐに準備いたします…」
クレアはすぐに紅茶を淹れると、リヴァイの机まで持っていき、自身もソファに腰かけ仕事を手伝い始めた。
昨夜リヴァイは、クレアのことを悶々と考えながら酒を煽ってしまったが、実のところはそんなに深刻な事態ではなかった。
誤解もすぐにとけ、無事に帰還したクレアの紅茶を飲みながら仕事をすることができている。
なんてことない日常が戻ってきただけのように感じるが、これはクレアを失うことなく壁外調査が終わったというとても重要な意味を含んでいる。
それだけでも、じゅうぶんに満足しなくてはならないが、人間とは欲深いものだ。
リヴァイは、クレアが自身の執務室で仕事を手伝ってくれてるだけではもはや満足できなくなっていた。
自分の机とクレアのソファまでの距離にまどろっこしさを感じ、イライラしてきてしまった。
クソッ…
心の中で呟くと、リヴァイは書類の山を抱えてクレアが仕事をしているテーブルにドンッと置くと、紅茶のカップを持って戻り、クレアの隣にドカッと座った。
隣に座ればクレアからは心地よく香るキンモクセイの香り。
そう。この距離だ。これでいい…