第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「ところで、生まれてくるのはいつ頃なんだ?」
「えっと…まだはっきりとはわかりませんが、おそらく季節が2つ変わる頃だと思います。」
「そうか…そしたらそれまでにちゃんと勉強しないとな。お前と違って、俺は何もわからないからな…」
「兵長…」
表情は穏やかだが、その三白眼の瞳の奥はどこか遠くを見つめているような気がしたクレア。
無理もないだろう。
母親がいた記憶はわずかにあるが、家族というものをほぼ知らずに育ってきたリヴァイだ。クレア以外の家族が増える楽しみや喜びはもちろんある。しかし単純にわからないこともたくさんだ。
「そんなに思い詰めなくても大丈夫です兵長!私だってなんにもわからないですから!」
「クレア…?」
「私は両親がいて、大事に育ててもらったと思います…でも…でも育てるのは初めてなので何もわかりません。子育ては、患者さんのお子さんを少し面倒みるのとはまったく違うと思いますし…なので何もわからないのは兵長だけではないので大丈夫です。一緒に勉強しましょう!」
両方の拳を固く握り上下に振りながらうんうんと頷き話す姿はなんとも力強い。
「私だってなんにもわかりません!」とあっけらかんに言われてしまえばリヴァイの心もなんだかスッと軽くなる。
「…そうだな、お前と俺との子なんだから2人で少しずつできるようになればいいんだよな…」
「そうですよ!私だってうまくできない事ありますし、立って抱っこやおんぶに関しては私のこの身体ではもはや不可能です。そのあたりは確実に兵長を頼りますので、宜しくお願いしますね。」
「あぁ、力が必要な場面は俺の役目だな。覚悟しておこう。」
「はい!頼りにしてますよ!」