第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
結局はその後、ウォール・マリア奪還作戦で足を切断する大怪我を負い、兵士を引退となったクレア。
調査兵を引退後は医師免許取得にむけ猛勉強をし、晴れて医師となった現在は続々と入団する新兵の健康管理にバタバタと大忙しの毎日を送っていた。
流産してしまった子とは2度会った。
会話の内容も忘れていたわけではない。
しかし、日々の忙しさに翻弄されてこの所はあまり思い出すことがなかった。
だからだろう。
リヴァイの言葉にハッとしたクレア。
「兵長…本当にあの時の子が…戻ってきてくれたのでしょうか…?」
「俺は、そう思いたい…」
「わ…私も…そう思いたいです…」
あの辛かった別れの日から、何回季節が変わっただろうか。長い時を経て再び自身の子として宿ってくれたこの命に感謝と感動が溢れて止まらない。
これだけでも奇跡だというのに、あの時の子はもう1つの命を連れてきてくれたのだ。
世界中の幸運がクレアに降り注いだといっても過言ではないだろう。
クレアは大きく何度もうなずきながら再び大粒の涙をこぼした。
「クレア…俺は今、本当に嬉しい…」
「うっ…うぅ…ありがとう…ございます…ありがとうございます…兵長に喜んでいただけて…本当に安心しました…」
感極まるクレアにつられリヴァイは両腕を伸ばし思い切り抱きしめようとするがすんでの所で力を抜いた。
クレアの身体の中には小さな命が2人も宿っているのだ。
そう自身に言い聞かせるとリヴァイはそっとそっと包み込むようにクレアを抱きしめた。
後頭部を撫で、背中をさすり、心を込めて精一杯の愛を伝えると、クレアは落ち着きを取り戻し目を真っ赤にしながらリヴァイを見上げる。
すると、ふとテーブルの上に置かれた紙袋の存在に気がついた。