第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「心音が、2つ…だと?それはつまり心臓が2つあるということか?」
「はい…」
「双子かもしれない…ということか?」
「はい…」
愛する妻の妊娠という報告だけでも十分すぎる程感動的が、さらに大きなニュースが飛び込みリヴァイは思わず口が一瞬ポカンと開いてしまった。
それと同時に思い出す“あの時”のこと。
「ハハ…そうか、俺はいきなり2人の父親になるってことなのか。1人でも驚きだが…双子とはな。最高に驚いたな。」
「兵長…」
「あの時の子が…やっと戻ってきてくれたんだよな…なんともデカい“忘れ物”と一緒に戻ってきてくれたな。」
「え…?」
あの時の子
それはウォール・マリア奪還作戦の前に流産した子のことを言っているのだろうか?
だいぶ月日はたったが、リヴァイもクレアも1日だって忘れたことはなかった。
クレアはリヴァイの“忘れ物”という言葉で、あの時意識を失っていた時のことを思い出す。
流産の痛みに耐えかねて気を失ったあの時、クレアは生と死の狭間のような空間で自身の胎内にいた子と会っていた。
クレアのことを母と呼んだその子とは、いくつか会話もした。
確かに空へ帰らなければならなくなった、忘れ物をしたと言われたことは覚えていた。
しかしそれは、流産の原因はクレアではないと、自身を責めないでと、その子なりの配慮の言葉なのだろうと思っていた。
その当時はリヴァイと結婚については何も話しておらず、当然子供を持つ未来などないと思っていたクレア。
またリヴァイとの子として戻ってきたいと言っていたが、それは残念だが実現しないだろうとその時はそう決め込んでしまっていた。