第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
クレアはただでさえ足が不自由で行動に制限がかかっている。
慣れたからと言っても、車椅子の操作や松葉杖での歩行は、かなりのエネルギーを必要とするだろう。
元々小柄な割には体力のある方だったクレアだが、兵士を引退してからは訓練もしなくなったせいか、以前より体力が落ちている場面が多くなったとリヴァイは感じていた。
今回の体調不良が、体力低下からくるものだったら仕事の量をセーブしなければ倒れてしまう。
倒れたのがきっかけで重い病気にでもなったら元も子もないのだ。
リヴァイは何度も休むように言ったがクレアは「薬を飲んでるので大丈夫です」、「今とても忙しくて先生に迷惑かけられません」などの理由をつけて休むという提案は却下されてしまっていた。
勿論クレアの仕事は理解してやりたいし、尊重もしたい。
しかし、心配なものは心配なのだ。
クレアのことを想えば想う程、大切だからこそ苛立ってしまい、苛立てば自身の器の小ささを嫌気がさし、完全に悪循環に陥っていた。
「畜生…」
昨日今日に至っては訓練も仕事も身が入らず、挙げ句にはハンジに八つ当たりをする始末だ。
目の前にはまだまだ終わりの見えない書類の山があるが、今はもう何もやる気が起きない。
「帰るか…」
窓の外を見ればうっすらと暗くなってきている。
クレアは昼に帰宅した。
約束通り帰宅後にベッドに入ったなら、そろそろ目が覚める頃だろうか。
何か食べられそうな果物でも買って帰ればクレアに食べさせられるかもしれない。
リヴァイは途中で止まってしまった書きかけの書類を引き出しにしまうと、ジャッケットを羽織り執務室の鍵をかけた。