第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「ここの仕事はやっておくからクレア君はここに寄ってから帰りなさい。兵長が仰っていた通り、帰ったら休んでいることだよ。いいね?」
「あ、あの……先生でも…」
「いいからいいから、ほら、気をつけてな」
医師は手紙のような物をクレアの手に握らせると、車椅子に座らせ医務室の扉を開ける。
「は…はい…ありがとうございます…」
ここまでされてしまえば従うしかなさそうだ。
クレアは医師に礼を言うと、荷物をまとめて医務室を後にした。
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「…………」
クレアは車椅子をこぎながら長い廊下をぼんやりと進む。
医師が投げかけた問診が頭から離れない。
何故、何故もっと早く気づかなかったのだろうか。
充実しながらも多忙な日々。
今思い返せば身体は小さなサインを出していたような気がする。
自身の体調にまったく気づかなかったことを今更ながら反省するが、もう遅い。
こんなんでは、また同じことを繰り返してしまう…
あれこれと考えを巡らせながら玄関まで辿り着くと、兵士と思われる人物が走って入ってきた。
午後の訓練はとっくに始まっている。
いったい誰だろうか。
「あ…ハンジさん?」
少し息を上げながら兵舎の玄関に入ってきたのはハンジだった。
「おーう!クレア!お疲れ!あれ?こんな所で何してるの?」
不安な気持ちで一杯だったクレアは、敬愛するハンジの顔を見て少しだけホッとしたような気分になったが、なんと返事をしたらよいなわからずしどろもどろになってしまう。
「あ、いえ……えーと…」
歯切れの悪いクレアの様子を見てハンジはハッとここ数日のリヴァイの様子を思い出した。