第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
あの日、クレアが運ばれてきた日のことは今でも鮮明に覚えている。
ウォールマリア奪還作戦から調査兵団が帰還したという知らせを受けて、医師はすぐに怪我人の処置ができるよう準備をし、近隣の医師に応援要請を出して外で待っていた。
きっと怪我人が大勢出ているはずだ。
近隣の医師に応援要請を出したと言っても外科処置を任せられる医師はほんの数人。
それにクレアの力を足してなんとかなるだろうかと大きな不安を抱えながら待っていると、調査兵団一行が兵舎に向かって来るのが見えた。
大丈夫
大丈夫
今回もクレアが頑張って応急処置を施してくれている。
どんどん上がる心拍数をなんとか落ち着かせようと何度も自身に言い聞かせる医師。
しかし、すぐに心拍そのものが停止してしまうかのような光景が目に飛び込んできた。
兵舎に向かってきている調査兵団の人数が、血の気が引く程少なかったのだ。
しかも、走ってこちらに向かってくる兵士の中に、一際目立つはずの低身長のクレアが見当たらない。
医師は手先と足先の体温がズンと凍りつくような感覚を覚えたがなんとか奮い立たせて駆け寄ると荷車に3人の兵士が横たわっていた。
医師の姿を確認するとその胸ぐらを掴み早口に状況を説明するハンジ。
早くなんとかしてくれとせかすリヴァイ。
混乱する頭でなんとか理解できたのはエルヴィンの死と、クレアの危機的状況だった。
他にも怪我人はいた。
サシャ・ブラウスの容態も後回しにできないが、怪我の状況的にクレアの方が優先と判断した医師。
足に巻き付けてある血まみれのジャケットをほどくと、足首から下がなく激しく損傷していた。