第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「先生…こいつの体調が悪いのは知ってるだろ?ずっと不調な上に今朝吐いたんだ。今日はもう帰らせてくれないか?」
言葉を詰まらせている医師に、無責任に帰れないと涙目で訴えるクレア。
リヴァイはクレアを困らせたい訳でも、医師を気不味くさせたい訳でもない。
ただ、無理をさせたくなかったのだ。
愛するクレアの身体が1番大切なのだ。
なんとか苛立つ気持ちを抑えて、冷静にクレアを早退させたいと申し出ると医師は納得したように頷いた。
「そうでしたか…私も心配しておりましたが、クレア君が頑張り屋なもので、つい頼りにしてしまい…申し訳ございませんでした。仕事の簡単な引き継ぎをしましたら薬を出して帰らせますので、兵長は訓練にお戻り下さい」
「承知した。クレア、帰ったら何もしなくていい。寝てろよ」
本当は自身で家まで送って行きたいが、間もなく午後の訓練も始まる。
リヴァイは医師の話に了承すると、医務室を出て行った。
「先生…あの…すみません…」
「いやいや、謝るのはこっちだよクレア君。なかなか体調が優れない中悪かったね。リヴァイ兵長にも心配をかけてしまった」
「い、いえ…そんな…」
「もちろん私も心配していたよ。薬を出す前にいくつか問診してもいいかい?」
「はい、大丈夫です」
医師はクレアのカルテを取るとペラペラとめくりながらペン取り、椅子にかけるよう促した。
「…………」
クレアのカルテの最後のページは、ウォールマリア奪還作戦で足を切断することになってしまった処置の一部始終が克明に記録されていた。
所々乱雑な文字になっている記録文は、当時の惨禍を物語っており医師の胸はズキリと痛んだ。