第12章 奇行種の休日
でもまぁ仕方ない。クレアはキレイな顔をしているが背も低く童顔だ。その上サイズの合っていないブカブカの服を着ていればとても18には見えない。
「はい…そうです…」
弁解も面倒になり適当に返事をすると…
「親孝行なお嬢ちゃんだねぇ、リボンつけておくよ!」
と包みに青いリボンをつけてくれた。
代金を支払い店をでると今度は洋裁店に寄った。そこでは金色の刺繍糸と刺繍針を買うと、クレアは近くの喫茶店に入った。
だいぶ外を歩いたからか、汗をかいたし喉がカラカラである。
オレンジジュースを注文し、しばし休憩タイムだ。
「はぁ…、喉乾いたぁ…」
冷たいジュースで喉を潤すと、予定していた買い物が終わり、一安心だ。
クレアは一息つくと、先程買ったハンカチの包みをそっとあけて、金色の刺繍糸を使い、チクチクと刺繍を始めた。
数分後、白いハンカチのすみに小さく浮かび上がったのは自由の翼の紋章だ。
リヴァイほど自由の翼が似合う兵士など他にはいない。
ハンカチに刺繍するにはちょうどよい柄だ。
「久しぶりにしては上出来だわ!」
クレアは安い綿のハンカチが少しでも見栄え良くなるように手を加えると、元の包みに戻し、リボンで止めた。
「………………。」
思えば1人でこんなゆっくりとした、時間をすごすのは、調査兵団に入団した日以来だ。
気づけば季節も春から夏へと移り変わっている。
あの子供らしくなかった自分が、訓練兵団に入り、ハンジと出会ったことで調査兵団への入団を決めた。
クレアが兵士になるという生き方を決め、更には1人の男に恋をしてるなど、今は亡き両親が知ったらさぞ驚くだろう。
この自分でさえも驚いてるくらいだ。
でも、兵士として生きる選択をした事に後悔はない。
ハンジと出会い、リヴァイと出会い、フレイアと出会えたのだ。
そして自分を変えてくれた調査兵団での生活が今はとても気に入っている。
亡き両親もきっと喜んで応援してくれているだろう。
クレアはそう思うことにした。
喫茶店の窓の外を眺めれば、仲睦まじく手をつないだり、腕を組んだりと、幸せそうなカップルが右に左に通り過ぎていく。
そんな光景を眺めていると、自然とクレアの思考を占めるのはリヴァイのことだ。