第12章 奇行種の休日
「おぉ!いいじゃねぇか!いいじゃねぇか!若ぇんだから恋してなんぼだ!おいマーサ、アレ持ってきてやれよ!」
「フフフ、はいはい。」
すると、マーサは店の奥から何やら小さな入れ物をもってきた。
それは陶器でできた小さな小さな軟膏壺だった。
クレアは受け取って蓋を開けると、中には小さなキューブ状の物が入っていた。
石鹸だろうか?
「あの…これはいったい。」
「これはね、わかりやすく言えば香油を固形にした様なものなの。クレアが好きなキンモクセイの香りを入れてあるんだけど、クレアの恋がうまくいくように、おまじないもこめてあるから、ここ1番勝負したい時に使ってね!」
「え?おまじないってなんですか?」
「フフフ、それは秘密よ。強くは香らないけど、一度つけると、お風呂に入っても香りが残るから、つけすぎには注意してね。」
「は、はい。ありがとうございます!!」
「恋が実ったら報告しにきてねー!待ってるからねー!」
店主夫婦の優しい笑顔に見送られながらクレアは香油屋を後にした。
再び賑わう商店街に戻り、クレアは紳士服を扱ってる店の前で足を止めると、ある事を思い出した。
以前、ザズとリゲルに襲われた時、リヴァイは自分のハンカチを使ってクレアの身体を拭いてくれたのだ。
あんな汚いものを拭いたハンカチなどとっくに捨ててしまってるに違いない。
お礼になるかどうかはわからないが、自分の所持金で買える物なのかどうか店に入って見てみることにした。
店の中は意外に広く、スーツやネクタイなどの売り場からカジュアルな普段着まで幅広く品揃えがあった。
スーツ関係の小物の売り場にいくと、目的の物はすぐに見つかった。
色や材質など数種類あるが、リヴァイには白以外には考えられない。
白に的をしぼって選ぶと、シルクか綿かの2択になってしまった。シルクはさすがに値段が高かったため、クレアは諦めて綿のハンカチを1つ買うことにした。
「お嬢ちゃん、お父さんにプレゼントかい?」
会計をお願いした店員からまさかの質問にクレアの顔は引きつった。
またか……自分の容姿を軽く恨むと同時に心の中でため息をついた。