第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「あ、あぁ…そうなんだ。それはこの間薬を仕入れに行った時に勧められた生薬なんだ。なんでも、二日酔いでも食べすぎでも胃の不快感によく効くと言われてね。生薬はいつも我々が処方している薬品よりも副作用が少ないから日々厳しい訓練をこなしている兵士のみんなにはちょうどいいかと思って試しに仕入れてみたんだ」
「そうだったんですね!では私で試してみましょう!」
そう言ってクレアはコップに注いだ水でいきおいよく生薬を飲み干すと、苦味で少し顔をしかめながら書類仕事に戻った。
「飲んだなら今日はそこの仕事が終わったら上がりなさい。今夜は無理せず早目に休むように」
「ありがとうございます先生」
申し訳ない気持ちもあったが、今日は急患もなく通常業務が順調に進んでいたため、医師の好意をありがたく受け取ることにしたようだ。
手元にあった書類に最後のサインを入れると、クレアは帰り支度をして早々に帰宅をした。
今晩ゆっくりと眠れば、体調も戻るだろう。
今日迷惑をかけた分、明日は挽回したい。
そう思ったクレアは、帰宅後は軽めの食事をとり医師から処方された生薬を飲むと、リヴァイに今日のことを書いたメモをテーブルに残してベッドに入った。
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しかし、クレアの体調は翌日になっても、そのまた翌日になっても、1週間たっても良くならなかった。
「うぅ……」
医師から処方された生薬はまったく効果がないということはなかったが、すっきり改善にはほど遠く、効き目が切れる頃にはまた元通りになってしまう。
そのことも伝えてはいたが、医師はどこか悩んだように「もう少し続けてみてくれないか」と同じ生薬を処方されてしまい今に至るのだ。