第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「残っていたスープを全部食べたおかげか、空腹感はなくなりその後は嘘のようにすんなり眠りにつくことができたのですが…問題は…目覚めの方でして…」
「……ふむ」
医師が頷くと、クレアは胸の下辺りを左手でさすりながら続ける。
「夜中に満腹まで食べてすぐに眠ったせいだと思うのですが…胃がもたれてもたれて…最悪の目覚めだったんです…朝食も昼食も抜いたのですがまだムカムカしていて…うぅ…」
そこまで話すとクレアはゴツンと額を机に落とし、そのまま唸りだしてしまった。
「それは大変だったねクレア君。そんなことならもっと早く声をかけてあげればよかった。すまなかったね…」
「いいえ…先生が謝らないで下さい…悪いのはあんな時間にあんな量を食べた私のせいです…自己管理ができず…医師の端くれとはいえ…情けないです…」
「いやいや、人間は機械じゃないんだ。いつも同じというわけにはいかない。そんな日もある。今日は薬を出すから早目に上がりなさい」
医師はクレアの症状に合わせた薬を選ぼうと薬品棚の前に立つと、何か思うところがあるのか少し首を傾げながら3種類の薬を手に取った。
そして少し迷いながらもその中から1つを選ぶと、2回分を分包紙に包んでクレアに手渡した。
「ほれ、これを飲んで今日は早目に上がりなさい。1つは今飲んで、残りは寝る前に飲むといい」
「あ、ありがとうございます!!」
クレアは服用するためにゆっくりと立ち上がり、フラフラと水道の蛇口をひねるとあることに気づく。
「…先生?これって…生薬?ですか?」
医師から手渡されたのは独特の香りのする生薬のような薬だった。
クレアは二日酔いや胃もたれで医務室にやってくる兵士達によく処方している消化促進の胃薬が出されるとばかり思っていたのだが、どうやら違うようだ。