第83章 第83章 番外編・奇行種、不調
「はぁ………」
静かな医務室に何度目かの重苦しい溜め息が漏れる。
それはそれは、後悔の念と共に。
「あうぅ……」
溜め息を漏らしたのはこの医務室で医師として働いているクレア・トート。
かつては立体機動装置を使い巨人の項めがけて飛び回っていた兵士だ。
足を切断する大怪我を負ったクレアは、兵士を引退し、今は調査兵団医務室の医師として毎日キビキビと働いているのだが、なんだか今日は朝から様子がおかしい。
滅多に風邪も引かず生理も軽い元気がとりえのクレアが、どんよりと重たい空気を纏いながら猫背で書類仕事をしている。
そんな姿に心配をした年配医師が声をかけると、クレアは申し訳無さそうにしながらも、また1つ溜め息を漏らし答えた。
「も、申し訳ございません…先生…」
「いやいや、謝らなくていい。いつも元気なクレア君だから心配になってしまってね。今日は朝から体調が悪そうだね?いったいどうしたのかね?」
「はい…実は……」
クレアは何とも言いにくそうな表情で、昨夜の出来事を語り始めた。
「昨日までは体調もよく、いたっていつも通りだったのですが…夜中に目が覚めてしまって…何故かはわからないのですが…空腹で眠れなくなってしまったんです…夕飯もいつも通りに食べたのにです。こんなの初めてで…」
健康な日々を送っていたクレアは、勿論夜の寝付きや睡眠に関してもまったくもって問題を感じたことはなかった。
眠れなかった事など兵士時代に数回あった程度だ。
「どうしても空腹で眠れなかったので、仕方なく多めに作っておいた夕飯の残りのスープを食べたのですが…食べ始めたら止まらなくなってしまって…気づいたら寸胴が空っぽになっていました…」
クレアは重々しく昨夜の出来事を話したが、まだ終わりではなかった。