第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
「あの…タリアさん、コレ……」
「え…?何?」
クレアから差し出された布袋を受け取ったタリアはすぐに中を確認したのだが、出てきたものに驚きを隠せなかった。
「こ、これは……」
「これは、ウォール・マリア奪還戦でモブリットさんが着用していた兵服のジャケットです。実は、私の足を切断した時に止血するために使わせてもらったのですが…それが今日たまたま医務室から出てきたんです。ついてる血のシミは私のモノで申し訳ないのですが…ハンジさんもタリアさんが持っているのが1番いいと仰ってたので…受け取ってくださいませんか?」
クレアが医務室の木箱から見つけた物とは、あの時切断した患部に巻いていたモブリットのジャケットだった。
「これはモブリットが最後の最後までこの壁内の人類のために戦っていた証なんだ。だからどうか、これはタリアに持っていてもらいたい。これから先どんなに辛い試練にぶち当たっても、モブリットがすぐ側で見守ってくれていると、励みにして欲しいんだ。」
「ハンジ…クレア…」
タリアは兵服を着たモブリットの姿を見た事がない。
しかしこれをいつでも目に入る場所に飾っておけば、勇敢で勇ましかったモブリットがいつでも側にいてくれるような気がする。
タリアは何度も頷きモブリットのジャケットを抱きしめた。
「ありがとう!!私…自分は1人なんだ…って、ずっと泣いてた…でも1人じゃない…ハンジもクレアも…それにモブリットもいる…私、この子のために頑張れるよ!!」
「うんうん…!大丈夫!タリアなら大丈夫だよ!」
ランスロットを寝かせているベッドのすぐ上にフックをつけてジャケットをかければ、本当にモブリットが側で見守っているように見える。
そんな光景に胸を熱くさせた3人は、目元を擦りながら笑い合った。