第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
「泣かないようにと気を張ると、疲れてしまいますよね!お疲れ様ですハンジさん。私すぐに作りますね!あっ!それと、事情を話したら商店の皆さんタリアさんの事すごく心配されてて…夜に色々と配達してくださるそうです!」
「本当に?!それはよかった〜!!」
この寒い中、乳飲み子を抱えて買い物をするのは大変だ。
商店の皆でタリアの見守りをしてくれるのならハンジも安心できる。
「それじゃあ、タリアさんの元気が戻るように栄養たっぷりのシチューを作りますね!!」
報告を終えたクレアは、元気よく腕まくりをすると、食材をカゴから出し手際よく調理を始めていった。
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「う〜ん!!いい匂い!!もうできるの?」
グツグツと煮込んている鍋から濃厚な香りがたちこめると、ハンジの鼻をここちよく刺激する。
「お待たせしました。もう少し煮込んだら完成です!ハンジさんもずっと抱っこお疲れ様です!」
「ううん!確かに首肩に腕バッキバキだけど、今日だけだもん…毎日毎日こうやってずっと抱っこしているタリアの事を考えたら、疲れたなんて言えないよ。」
「ハンジさん…」
「本当に、“母の愛”ってすごいね…あんなに疲れてても、眠たくても、タリアはこの子を置き去りにして逃げ出したりしなかったんだから…」
ハンジは気持ち良さそうに眠るランスロットの頬を優しく撫でながら感嘆のため息をついた。
「本当に…仰る通りです…」
そう…タリアは2人に弱音や愚痴こそこぼしたが、泣き止まないランスロットを見捨てるような事は決してしなかった。
それだけで、立派で素晴らしい母親だ。