第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
「だから、寝るんだよ!ほら立って!眠い時は寝ないとダメだ。特にタリアは産後間もないんだ!無理は絶対によくない、ベッドに行くよ!」
「ハンジ…ちょ…ちょっと待って!?」
「ダメ!待たない!」
「あぁ…!!」
ハンジはタリアの手を引っぱりズルズルと引きずりながら寝室へと向かって行った。
「ハンジさん…タリアさん…」
シンと静まり返ったリビング。
目の前のベビーベッドには生まれて間もないランスロットが小さな寝息を立てている。
タリアがこんなに育児でいきづまっているなんて思ってもみなかった。
こんな事なら、便りを待たずにハンジと来ればよかったと、クレアは痛む胸を押さえながら頭によぎるのは後悔の2文字だ。
「クレア…?」
奥歯を噛みしめながらランスロットを見つめていると、ハンジが寝室から戻ってきた。
「ハンジさん…タリアさんは…?」
「相当疲れていたみたい。ベッドに横になったらすぐに眠っちゃった。」
「そう…ですか……」
「タリア、1人で抱え込んでたんだね…もっと早く押しかければよかった…それにしてもこの子、よく寝てるね〜。ずっと泣いてて寝てくれないなんて想像できない。」
ハンジはよく眠っているランスロットを覗いて首を傾げた。
「“この時間だけは”って、タリアさん仰ってましたね?ってことはこの眠りから覚めたら泣き出すって事ですよね?」
「うん…こんなに気持ち良さそうに眠ってるのに、信じられない。でもまぁ、とりあえずタリアが起きるまでは私達でお世話を頑張ろう!!少しまとまった時間眠らせてあげないとかわいそうだ!!」
ハンジは廃人と化したタリアをなんとか元気に戻したくて鼻息を荒くして気合いを入れた。