第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
「おじゃましま〜す…」
中を覗くと、キッチン兼リビングにベビーベッドが置かれていた。
泣き声が聞こえないため、寝ているのだろう。
ハンジは小声でソロリソロリと中へ入っていった。
「大丈夫よ、この時間“だけ”はよく眠ってくれるの。あと2時間程したらまた泣き出すんだけどね…あっ、ごめんなさい…お水しかなくて…」
タリアはグラスを出して水差しの水を注ぐと、力なくイスに腰掛けた。
「いいっていいってそんなの!!それよりご飯ちゃんと食べてる?なんか痩せた感じするけど…風邪でも引いて寝込んでたの?」
「ううん…風邪は引いてない…だけどね…ずっと眠いの…寝たいのに…ランスロット、朝までずっと泣いてるから眠れないの…」
「タリア……」
「夜の仕事を辞めて、夜はちゃんと眠る生活してたからかなぁ…今まであんまり寝不足だと感じた事ないのに…とにかく眠いのよ……」
「タリアさん…」
「病院の先生にも相談したんだけど、生まれたばかりの赤ちゃんにはよくある事みたいで…熱がないのなら落ち着くまで抱っこしてあげてって…でも一晩中抱っこして、やっと眠っても、ベッドに置いたらまた泣くのよ?!もう私…この子育てていく自信ない…うっ…うぅ……うぁぁぁん…!!」
タリアはシングルマザーだ。
普通なら夫婦2人で乗り越えるべき問題を1人でなんとかしなければならないのだ。
今まで1人で抱えていたものをハンジとクレアに話すと、勝手に涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「タリア…えっと…まず、落ち着いて!!落ち着こう!!」
「うぁぁぁん…私は落ち着いてるわよぉ…!!」
「そっか!わかった!わかったから、そしたら寝よう!」
「え?!」
わんわんと泣き出してしまったタリアだったが、ハンジの突拍子もない提案を聞くと、ポカンと口をあけてしまった。