第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
「ハンジさん…これ、予備の包帯を整理しようとしたら出てきたんです。きっとあの時のバタバタで紛れ込んでいたのだと思われますが…ど、どうしましょうか…?」
「…………」
“包帯の整理をしようとしていたら出てきた物”、を見つめると、ハンジは一瞬戸惑ったような表情になったが、すぐにいつもの笑顔に戻って答えた。
「ちょうどいい…それは、タリアの手元にあるべきだと思うから…持って行こう。」
「ハンジさん…」
「じゃあ先生、行ってきます!クレア休みにしてくれてありがとう!!」
「ゆっくり行ってきて下さい。」
クレアはいつもの笑顔に戻ったハンジを少し心配そうに見上げたが、当の本人は鼻歌を歌いながら車椅子を押している。
ハンジの言う通り、これはタリアが持っているのが1番いいのだろうと考えたクレアは、持っていた物をたたむと、近くにあった布袋に入れて医務室を後にした。
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兵舎を出て歩く事約30分。
ハンジとクレアはタリアの住んでいる小さな借家までやってきた。
「とーちゃくー!!……ん?あれ?なんかやけに静かだね?」
「そ、そうですね…赤ちゃん、眠ってるのかもしれないですね。ハンジさん、ノックは控えめにされた方がいいかもしれないですよ?」
「う、うん…そうだね!!」
静かに眠っているところを起こしては可哀想だ。
ハンジは聞こえるか聞こえないかくらいの小さなノックを3回すると、すぐに扉が開いた。
「どちら様でしょうか…あっ!!ハンジ…クレア…!!」
ハンジ達がこの家に来るのは実は初めてではない。
タリアはハンジとクレアがモブリットの手紙を届けにやって来たすぐ後に、人生の半分以上住み込みで世話になっていた仕立て屋兼娼館を出て借家に引っ越していた。2人はその後に何度か遊びに来ていたのだ。