第4章 懇願
──調査兵団本部、団長執務室──
夕食を済ませたハンジ、リヴァイ、ミケ等の数人の幹部がエルヴィンに呼ばれ団長室に集められた。
「キース教官から手紙?なんて書いてあったの?」
ハンジが身を乗り出し、焦れている。
「みんな聞いてくれ、キース教官から来春卒業の102期生の処遇について相談がきている。内容はこうだ。」
──クレア・トートという訓練兵がハンジ班への所属を熱望している、何度無理だと言っても聞かず、ハンジに心臓を捧げると言い出す始末だ。退団命令をだすのは簡単だが、クレアの立体機動装置の腕はかなりのものだ。特別待遇をするか退団命令をだすかはそちらに任せたい。近いうちに内密で訓練の様子を視察しにきてくれ。とにかくしぶとくて、疲れてきている。──
「ということらしい。」
団長室がかすかにざわつく。
「このクソメガネに心臓捧げたいなんざ、とんだ奇行種だな、退団命令でいいだろ」
「ちょっ!ちょっと待ってよリヴァイ!いいじゃん!いいじゃん!何その子!めっちゃ滾る!」
「そもそもその訓練兵は先日のハンジの講義で洗脳されたんだろ?ならハンジが責任とって引き取ればいいんじゃないか?」
「ミケ!ナイスアイデア!」
「はっ、ふざけんな!調査兵団に変人はクソメガネひとりでじゅうぶんだ、これ以上は必要ねぇ!」
「あぁ〜〜!なんだよ〜、エルヴィン何とか言ってよー!」
ハンジは頭をグシャグシャとかきながらエルヴィンに助け船を求めた。
当のエルヴィンも悩んでいた。
こんなことは前例になかったため簡単に特例を認めてもよいものかと。
「…キース教官が手紙をよこして判断を仰いできたほどだ、よっぽど即退団にできない逸材なのだろう、そうなれば実際に見に行って判断するしかなさそうだが…」
「だよね!そうだよね!リヴァイ!行こう!早速見に行こう!」
「何で俺なんだよ。おまえとモブリットでいけばいいだろ!」
「モブリットはダメだ、私が外している間に押し付けたい…イヤっ!ゴホ!ゴホン!任せたい執務が山ほどある。」
「ふざけんな、この怠慢クソメガネ」
「いや、視察はハンジとリヴァイでいいだろう。特に立体機動の技術は特例に見合うものではなくてはならない。リヴァイに判断を任せたい。」
「エルヴィン正気か?」