第80章 最終章・もう1つの花言葉
いつまでも元気でいて欲しかった。
しかし、あの時巨人の襲来もなく、壁が壊される事もなければ、クレアは診療所を継ぎ細々と暮らしていただろう。
両親の死がなければ出会う事がなかったリヴァイ。
胸が締めつけられるような悲しい運命だが、だからこそ、クレアは想う。
両親は、自身の命と引き換えにリヴァイと出会わせてくれたのだと…そして自分を変えるきっかけをくれたのだと。
「うっ…うぅ……」
そう思えば思う程、リヴァイとの愛は尊く、かけがえのないモノだと実感する。
「兵長…私も誓います…兵長を愛して、2人で幸せになる事を…両親と、キンモクセイの香りに…誓います…」
「そうだな…そしたら、まずは2人で住む家を探すか…兵舎で新婚生活を送るのは御免だからな。」
「はい!!!」
澄み切った青空にクレアの元気な声が響く。
赤い目元を擦りながらも満面に輝く笑顔はどんな宝石よりも美しい。
そんな美しい笑顔に見惚れていると、ハッとある事に気付く。
「…………」
リヴァイは自身の気持ちを伝えるのに必死で、スッカリ大事な事を忘れていた。
「クレア、大事な物を忘れていた…」
「え…?何ですか?」
「…コレだ。」
リヴァイはポケットをゴソゴソとさせると、クレアの左手を取った。
「あっ…!」
リヴァイがポケットから取り出したのは、クレアの指に合わせて造られた小さな指輪だった。
白金のリングにオレンジ色のガーネットが埋め込まれたシンプルなデザインだ。
しかしキンモクセイの花のように深く色濃く発色しているガーネットの石は、シンプルなリングを一際豪華に演出している。