第80章 最終章・もう1つの花言葉
「ど、どうって……」
「俺と結婚したいのか、したくないのかはっきり言え。」
「へ、兵長……」
何だかジリジリと脅されているように感じなくもないが、クレアはリヴァイの言う通り、ちゃんと考えてみた。
結婚……
結婚とは、同じ姓を名乗り夫婦になる事。
仲睦まじくひとつ屋根の下で暮らす事。
そして、家族になる事。
祖父母を早くに亡くしていて、兄弟もいなかったクレアには、もう家族と呼べる人間がいない。
そしてなんの偶然かリヴァイもそうだ。
そんなリヴァイと、家族になれる。
家族と呼べる相手ができる。
そんな風に考えたクレアは、なんだか胸の奥が熱くなってきたが、それと同時にそんな贅沢な幸せを手にする事は、果たして許されるのか不安にもなった。
「わ、私は…今のままでも十分に幸せです。これ以上何かを望んでは…いけないような気がします…」
「お前はそう言うと思った…だけどな、俺は…嫌だ。」
「……?!」
「クレアも俺も、深く想い合っているのは確かだ。だが、同じ兵団内にいるにも関わらず俺達がプライベートで2人きりになれる時間はどれだけある?きっと、お互いに兵士をしていた時より少ないはずだ。俺は兵士である前に、1人の人間として、お前と幸せになりたいと思っている。結婚をして夫婦になれば、どんなに忙しくても帰る場所は一緒だ。どんなに疲れていても、苦しくても…夜になれば同じベッドで眠れるんだ。」
「…兵長……」
「それに…夫婦になれば、俺は堂々とお前を守る事ができる。恋人というあやふやな関係では“公私混同”ととられる事も、夫婦であれば違ってくる。男が家族を守るのは…当たり前だからな…」