第80章 最終章・もう1つの花言葉
「お、お父様…お母様…兵長、これは…」
彫られていた名前はクレアの両親の名前。
これを見たクレアは、この石が墓石だとすぐに理解できた。
でも何故。
あの時の惨劇を思い返せば、遺体などそこかしこにあったはずだ。
なのに何故両親の墓があるのだ。
疑問符だらけだったクレアはリヴァイの顔を見上げる。
すると、リヴァイはクレアの蒼い瞳を真っ直ぐに見つめ、真面目な表情で答えた。
「シガンシナ区の復旧が始まったと同時に、俺はクレアの生家の事を調べたんだ。」
「え…?私の生家を…ですか?」
「そうだ。エレンの父親と同様にシガンシナ区では有名な診療所だったからな。場所はすぐに特定できた。そして、お前の両親であろう遺体も確認できたと報告が入ったんだ。」
「……………」
「発見した時にはもう白骨化していたそうだが、2人とも同じ部屋にいたそうだ。壊れた家屋の瓦礫は全て撤去される事になっていたから、俺が更地になったこの敷地に墓を建てた…黙っていて、すまなかったな…」
「兵長…どうしてですか…?どうして兵長が私の両親のお墓を…?」
リヴァイが墓を建てた事に対して負の感情はまったくなかったが、クレアはどうしてそんな事をしたのかがわからなかった。
ウォール・マリアを奪還できたら、両親に手を合わせに行きたいという願いがあった事はリヴァイは知っていたはずだ。
当然クレアは自分で貯めたお金でそうしようと思っていたのだが、いったいどうしてだ。
すると、リヴァイは再びクレアの両手を優しく握り、続けた。