第80章 最終章・もう1つの花言葉
「あぁ、ここはシガンシナ区だ。キンモクセイの花…見たいか?」
クレアの両手をそっと握りながら答えたリヴァイ。
やはりここはシガンシナ区で間違いなかった。
ウォール・マリア奪還作戦で来た時のシガンシナ区は巨人によって破壊された家屋に、草木は枯れ果て、とても人が住める状態ではなかった。
人々が戻り、草木を植えられる程に復旧の進んだシガンシナ区…
いったいどんな風景になっているのかクレアは早く見たくなり大きく首を縦に振った。
「了解だ。目隠し取ってやる……」
リヴァイの右手がそっと後頭部に回ると、シュルッと布のこすれる音と共に視界がクリアになる。
「あ…そ、そんな……」
覆っていた布が取れて飛び込んできたモノ…
クレアは目を点にして驚いた。
「兵長…こ、これって…あ、その…ここって…!!」
聞きたい事がありすぎてうまく質問できない。
まず目に飛び込んできたのは美しく咲き誇っているキンモクセイの花。
クレアの身長より高い立派なキンモクセイの木が目の前に3本植えられている。
でも驚いたのはそれだけではなかった。
壊れた家屋の瓦礫は撤去され、歩きにくかった道も舗装されている。
新しい建物が次々に建っているが、ここは…忘れもしない…大切な場所。
周りの景色はクレアがシガンシナ区に住んでいた頃とはガラリと変わってしまったが、この場所は…
まぎれもなく、クレアが生まれ育った生家があった場所だ。
そして、キンモクセイの木の下には四角く加工された石。
その石には
クラウス・トート
ヘルガ・トート
と彫られていた。