第80章 最終章・もう1つの花言葉
しかし、そんな事を考えていたら急にダスゲニーが止まった。
「………?!」
目的地に着いたのだろうか……
だが、リヴァイはダスゲニーからおりる様子はない上に、誰かが話しかけてきた。
それと同時にガタンと地面が揺れる。
この感じは…
昇降機。
トロスト区を出てから昇降機に乗る場所といえば1つしかない。
そう…シガンシナ区への入口だ。
現在シガンシナ区は復旧作業で連日多くの人間が出入りしており、活気が戻りつつあるのは知っていたが、リヴァイはここに何の用があるのだ?
昇降機で壁をこえ、ガヤガヤと賑わう声が聞こえてくると、ずっと黙っていたリヴァイがようやく口を開いた。
「もう少しだ…」
「は、はい……」
そして再び無言なるリヴァイ。
仕方なく“もう少しだ”と言ったリヴァイの言葉を信じておとなしくしていると、爽やかな風にのってよく知る花の香りがクレアの鼻を刺激した。
「(……この香り。)」
この香りは秋の訪れを知らせるキンモクセイだ。
巨人によって破壊されたシガンシナ区は、草木や花を植える余裕が出るほど復旧が進んでいるのだろうか?
ダスゲニーの脚が一歩、また一歩と、進めば進むほど香りが強くなる。
リヴァイは、キンモクセイの花が植えられてるのを誰かから聞いて自分を連れてきたのだろうか。
ドキドキしながら心地良く香るキンモクセイを堪能していると、リヴァイがダスゲニーからおりた。
「長旅ご苦労だったな…」
「あ…兵長…ここはシガンシナ区…ですよね?それと、この香りは…」
リヴァイに手を引かれてダスゲニーからおりたクレアは、目隠しをしたまま問いかけた。