第80章 最終章・もう1つの花言葉
「キャッ、キャアア!!!」
馬体の大きいダスゲニーは駈歩の時の反動も大きい。
身体の小さなクレアがバランスを崩せば振り落とされてしまう。
「ちゃんと捕まってないと落馬するぞ。」
「な、な、ならこの目隠し取ってくださいよ!!」
「それは断る。」
「そんなぁ……」
今日のリヴァイはなんだか変だ。
いつもちょっと不機嫌そうで気難しい表情をしているが、何となく普段より口数が少ない気がする。
しかし、怒っているわけではなさそうだ。
目隠しを取る気はないようだが、その代わりにリヴァイは両腕でしっかりとクレアを固定して身体が大きく揺れないように力を込めた。
そのおかげで感じる揺れが小さくなったクレア。
口ではぶっきらぼうな言い方をしていても、行動はこんなにも優しい。
リヴァイがどんなつもりで目隠しをしたのかはわからないが、もう黙って言う事を聞くしかなさそうだ。
クレアは力強く包み込むリヴァイの温かい腕にドキドキしながらも、鞍に付いているサドルホルダーをギュッと握り直して身を任せた。
久しぶりの外出だ。
そしてリヴァイが一緒なのだ。
きっと、素敵な事が待っていると信じて、クレアはダスゲニーに揺られながら目的地へ到着するのを心待ちにした。
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「……………」
トロスト区の兵舎を出発してからだいぶたったが、ダスゲニーは変わらず走っている。
昇降機で壁を越えたため、ウォール・マリア内を走っているのは理解できていたが、いったいどこまで走るのだろうか。
随分時間もたったため、ウォール・マリア内のどの辺りにいるのかすらもクレアはわからなかった。