第80章 最終章・もう1つの花言葉
「はぁ…危なかったなぁ…」
リヴァイの執務室を出たクレアは、自室に戻るために車椅子を動かしたが、突然過ぎる出来事が続き心臓はバクバクだ。
リヴァイに触れられるのは嫌ではない。
長い間触れ合っていなければ、クレアの身体だって寂しさを感じるのだ。
そのためさっきは、ついどうにでもなってしまえと思ってしまったが、やはり執務室では何が起こるかわからない。
逆に入ってきたのが自分達の事情を知っているハンジでよかった。
もし仮にリヴァイの雄姿に憧れを持って編入してきた若い兵士に見られでもしたら、とんでもないトラウマを残してしまうだろう。
クレアは両頬をパンッと叩いて恥ずかしい気持ちをなんとか吹き飛ばすと車椅子を勢いよくこいだ。
もう少しでエレン達が部屋に来てしまう。
それまでにおもてなしの準備を済ませなくては。
サシャは美味しそうに頬張るだろうか。
いつもクールなミカサも笑顔になってくれるだろうか。
男子達の口には合うだろうか。
そんな事を考えたら自然と楽しくなってきたクレア。
「ふふ、何だか私もみんなが部屋に来てくれるの、ワクワクしてきちゃった。」
まだ仕事をしているリヴァイとハンジに対して、少し申し訳ない気持ちもあるが、せっかく自分が提案して準備をしたのだから楽しまなくては損だ。
「兵長、ハンジさんごめんなさい…明日はお仕事のお手伝いしに行きますので、許してくださいね…」
クレアは一度止まって後ろを振り返り、リヴァイ達に謝罪の気持ちを送ると、珍しく鼻歌を歌いながら自室へと戻りエレン達がやってくるのを待った。