第80章 最終章・もう1つの花言葉
「あ…兵長、お忙しかった…ですよね?私ったら…申し訳ございません…」
クレアは執務室に入るとすぐにリヴァイの机の上に並んでいる書類の山が目に入った。
こんなに忙しい所を邪魔してはいけない。
そう思ったクレアはすぐに謝り車椅子を反転させようとしたのだが…
「仕事は後で構わない。お前がここに来るのは久しぶりだな…ゆっくりしていけ。」
ゆっくりしていけとあっさり断られてしまった。
「で、ですが……」
「俺がいいと言っているんだからいいんだ…それより、要件はなんだ?」
「あ、あの…実は……」
申し訳なさそうにモジモジとしているクレアの膝の上には、小さな包みが2つ乗っている。
クレアは応接セットのテーブルにその包みを置くと、ポツリポツリと話しだした。
「えと…今夜、104期のみんなでお菓子パーティーをする事になったんです…」
「はぁ?!“お菓子パーティー”だと?」
“お菓子パーティー”など、ファンシーな響きに思わず眉間にシワが寄るリヴァイ。
「はい、毎日厳しい訓練を頑張っているエレン達に労いの気持ちを込めて私がお菓子を焼いてあげる事になったんです。昼過ぎに調理場を借りてクッキーとかケーキを焼いたんですけど、思っていた以上に沢山できてしまって…兵長とハンジさんにもお裾分けしようと思って持ってきました…」
「これを、俺に…か?」
「はい…兵長のは甘さを控えた紅茶味と、シナモンのクッキーです。私、紅茶を淹れますのでよかったら召し上がってください!」
そう言うと、クレアは簡易キッチンの棚からヤカンを出して湯を沸かし始めた。