第80章 最終章・もう1つの花言葉
ー夕刻ー
「はぁ……」
訓練を終えたリヴァイは、休憩もとらずに執務室に戻ると、溜まった書類仕事を片付け始めた。
以前は仕事が溜まると途中で訓練を抜けたりしていたが、最近は編入してくる兵士も少しずつ増えてきている。
彼らの指揮を高めるためにもリヴァイの訓練参加は非常に重要だ。
人類最強の兵士長がいるのといないのでは、やはり緊張感が違う。
そのためリヴァイはなるべく訓練にでるようにしていた。
しかし、そうすると自然と山積みになっていく書類仕事。
やってもやっても片付かない現実に思わずため息が漏れた。
「……………」
朝クレアがこの部屋の掃除に来なくなってから、早いもので1年が過ぎた。
ずっと任せていた執務室の掃除だが、不自由になってしまった身体でやらせるなんてとてもできない。
それに大元をたどれば執務室の掃除は、単にクレアを側に置いておきたいがための口実にすぎなかったのだ。
お互いの想いが通じ合ってからもずっと、クレアは2人の時間を大切にするかのように続けてくれていたが、ケガをきっかけに掃除にはこなくていいと断わった。
それと同時に医師免許取得を目指して勉強を始めた事もあり、朝の仕事の手伝いもやめさせた。
クレアは寝る間も惜しんで遅くまで勉強していたため、手伝いをやめさせた事は間違いではなかったのだが、医師として働くようになってからは、1人前の戦力として医務室を任される事も多くなり、また別の意味で中々顔を合わせるのが難しくなってしまった。
兵士長として働くリヴァイに、医務室の医師として働くクレア。
同じ兵舎にいるのにクレアが兵士だった頃よりずっと一緒にいる時間が減ってしまった。