第80章 最終章・もう1つの花言葉
「兵長とそんな話をした事はないんだけど…兵長の立場を考えたらあまり現実的じゃないわ。サシャの期待に応えられないのは残念だけど、私はこのままでも十分幸せだから…」
「そうですか…」
サシャは心底残念そうにうなだれてしまった。
「でも、話をしたことないって事は、クレアさんは兵長がどうお考えが知らないんですよね?」
「ま、まぁ…そうなるけど……」
「サシャ聞いたか?!兵長は、これから気が変わるかもしれない。もしそうなったら兵団全体でお祝いだ。祝い飯も振る舞われるかもな!」
「そ、そうですよね!!」
コニーがはげますように肩を叩くと、サシャは“祝い飯”というキーワードでシャッキリと背筋を伸ばし、自然と溢れてきた涎を袖で拭った。
サシャの中ではおめでたい話題=祝い飯という方程式が成り立っていたようだ。
「兵長と話した事はないし、断言はできないけど…期待はしないでね。でも、明るい話題が欲しいっていう気持ちはよくわかるわ!」
薄給な上に娯楽も皆無な調査兵団。
いくら公に心臓を捧げた兵士といえど、まだ10代半ばの若者には厳しい訓練だけという日々は辛いものがあるだろう。
そこで妙案が閃いたクレアは、とある提案をしてみた。
「私、今日はそこまで忙しくないの。だから後で調理場を借りてお菓子を焼いてあげる。今夜はこっそりとみんなでお菓子パーティーをしましょう?!」
「え…えぇ?!!」
「本当っすか?!」
「えぇ、本当よ。“めでたい”話題とは程遠いけれど、“明るい”話題くらいにはなるでしょ?みんな毎日厳しい訓練を頑張ってるから、私からささやかなご褒美を贈らせて。」