第80章 最終章・もう1つの花言葉
「あ…そ、そうか……」
海でされた熱い抱擁と濃厚なキス。
あの時の事を思い出すだけで、頬は上気し頭の中は爆発寸前だ。
人前でキスをするなど、確かにリヴァイらしくなかったが、結局はどうしてあんな大胆な事をしたのかクレアもわからず終いだった。
そんな出来事を公開プロポーズと言ったサシャ。
そしてそんな話題で盛り上がっていた104期達。
若者達の想像力の半端なさに天晴となったクレアは心の中で拍手を送った。
「そうですよぉ…憲兵団や駐屯兵団では既婚者がいるんですから調査兵団にもそういうおめでたい話題があってもいいと思うんですよねー。」
「確かに、他の兵団には既婚者もいるけど…調査兵団の特性からいって…難しいわ…」
「だからですよ!!ほっといたら暗い話題しかないのが調査兵団です。なので明るい話題やおめでたい話題が欲しいです〜!!」
「サシャ……」
調査兵団の敵は無垢の巨人から巨人化できる人間へと変わったが、常に死と隣り合わせという事には変わりない。
以前は恋人同士になっている兵士をよく見かけだが、皆結婚という形にはならないまま死んでしまった。
「……………」
やはり、どうしたって難しいのだ。
リヴァイも数え切れない程の死と向き合ってきた。
その中には当然恋人同士だった兵士や、街に恋人がいた兵士もいたはずだ。
そんなのを目の当たりにしてきたら、結婚という形に対して疑問を持つ気持ちも理解できる。
リヴァイと結婚について話した事は1度もないが、やはり現実的ではない。
サシャの気持ちはわからなくはないが、期待に応えるのは無理そうだ。