第80章 最終章・もう1つの花言葉
「ジャン……」
壁の外の脅威と戦うには、巨人を討伐する能力だけでは足りない。
今は対人戦闘を前提とした、より柔軟でより高度な戦闘能力が求められているのだ。
立体機動装置も対人戦闘を想定した作りにどんどん改良が進み、以前クレアが使っていた物は“旧式”となってしまった。
時代も歴史も文明も、目まぐるしく変化している。
ジャンが戸惑いを隠せないのも当然だ。
「どうかみんな無理はしないで…心ってね、目には見えないけれど、身体と密接に繋がっているの。だから、心が元気をなくすと、自然と身体の具合も悪くなってしまう…もちろんその逆も然り。そんな状態で訓練に出たら間違いなくケガをしてしまうわ。だから、体調が悪くなくっても…心がしんどいと思ったらすぐに医務室に来て。お願いね?」
「は、はい…ありがとうございます!」
若い兵士のメンタルを支えるのもクレアの大事な仕事だ。
巨人と戦うだけではなくなってしまった今の調査兵団には特にだ。
「おいジャン、気付いてないみたいだから教えてやるが、鼻の下伸びてるぞ。クレアさんはお前に個人的に話をしてるんじゃないからな。そこんとこ勘違いするなよ。」
「お、おい!!いきなりなんだよコニー!」
「あれ?気づいてなかったんですか?さっきから伸びっぱなしですよ?」
「伸びてねぇよ!!!」
「変な妄想はやめとけ、リヴァイ兵長に削がれるぞ…」
「エレン!誤解を招く事言うな!!!」
クレアの優しさ溢れる話に自然と表情が緩んでしまったジャン。
もちろんやましい事など考えてないが、自分達の身体を真剣に心配するクレアの姿は、少なからずジャンの中で眠る男の本能を刺激してしまったようだ。