第79章 海を見に行こう!
「言われて見れば…まぁ、わからなくもないが…」
「なんか…こしょこしょとこそばゆいです。」
「ならもう出るか?」
ジャケットの裾を掴んでブルブルと力んでるクレアを見て、リヴァイはもう出るかと提案したのだが……
「い…いいえ…もう!!な、慣れましたから!!」
まだ海に入っていたかったクレアは、ブンブンとかぶりを振り断った。
なんとか砂の感触にも慣れてきたクレアは、リヴァイの近くで波と戯れたり、無邪気に遊ぶジャン達を眺めたり、魚を捕まえようと格闘してるハンジに声援を送ったりと、思い切り海を堪能した。
そして、クレアは考える。
ここは同胞が“楽園送り”にされた場所。
壁の外の脅威が何度も往来している場所。
こんな観光のように海を眺める事は、本当の意味での“平和”を勝ち取るまで、もう2度とできないだろう。
その平和は、自分が生きている間に勝ち取れるのかどうかは、誰にもわからない。
今この瞬間を、しっかりと記憶に焼きつけておかないと、絶対に後悔する。
クレアは皆から視線を外して沖の方をじっと見つめると、そっと胸に手を当てた。
どこまでも続く青い海。
日光が反射してキラキラと光り輝く水面。
白い飛沫を上げ、寄せては返す波。
サラサラの砂浜。
自然と心が落ち着く波の音。
自身の目に映る全ての物が美しい。
自身の耳に飛び込んでくる全ての音が心地良い。
これからどんなに辛い戦いになっても、今見た景色は絶対に忘れたくない。
また、またいつか、美しい海を眺めるためだけに…ここに来たい。
それまでは、自分は自分にできる精一杯の事をやろう。
皆の健康を守り、心身ともに万全な状態で送り出せるように、全力を尽くすのだ。