第11章 奇行種の初陣
さて、まず何から教えようか…
ハンジが巨人や実験のこと以外で頭を捻らすのは滅多に無いことだ。
「クレア、まず1つ勘違いしてる。リヴァイは怒ってなんていないよ。」
「え?、そうなんですか?じゃあなんで?」
ちょっと身を乗りだし首をかしげると、蒼い瞳で見つめられたハンジは、その仕草に思わず抱きしめたくなってしまった。
……可愛い。
まったくリヴァイはモタモタと何をやっているのだ。
こんな可愛く見つめられると、リヴァイにくれてやるのは勿体無いなどと、危ない思考が脳内をめぐってしまう。
「リヴァイはクレアのことを心配していたんだよきっと。あの様子だと、拠点に到着した時も探していたのかもしれないね。」
「そうでしょうか……なんだか兵長に怒鳴られたの初めてで…次会うの、ちょっと怖いです。」
泣いてはいないが、しゅんと肩を落としてしまった。
無理もない。
リヴァイが好きだと気づいたのがつい昨日のことなのだ。それなのに無事だとわかった瞬間に怒鳴られてしまえば、さすがのクレアもヘコんでしまう。
「それは、クレアのことを本気で心配していたからだよ。大丈夫。リヴァイは不器用なだけだから。きっとクレアからの討伐報告なんか聞きたがってるんじゃないかな。次会えたら話してあげなね!」
「………………はい。」
自分のことを本気で心配しているなど、半信半疑ではあったが、リヴァイと付き合いの長いハンジの言うことはきっと間違っていないだろう。
クレアはとりあえずだが、返事を返した。
「よしよし、明日と明後日は全兵士、特別休暇だからしっかり身体を休めるんだよ。外出も大丈夫だけど、遠出する時は声かけてね。」
「わかりました。」
すると、調度良いのか悪いのか、モブリットがハンジを呼びにきた。
「あ、分隊長、ここにいたんですね。報告書などの準備、できましたよ。」
「ありがとう。エルヴィンにどやされる前に提出しないとね!クレア、私達はもう行くけど大丈夫?」
「はい。立体機動の点検が済んだらすぐに上がります。お疲れ様でした。」
「はーい、何かあったら執務室にいるからねー!」
ハンジはモブリットと兵舎に戻っていった。