第11章 奇行種の初陣
立体機動の点検を終えて自室に戻ると、フレイアの姿はなかった。
きっとエルドの所であろう。
クレアはフレイアの帰りを待たずに風呂の支度を始めた。とにかくこの巨人の返り血を洗い流したかった。
大浴場に着き、シャワーを出しながら髪の毛を洗うが、血でバリバリに固まった髪の毛はなかなかうまくとけてくれなかった。
洗髪用の石鹸を流すたびに足元にはお湯に混じった血の湯だまりができてしまう。
なんだか救援に行ったときの状況が思い出され、かすかに胸が痛んだ。
3回程洗髪を繰り返したあたりでようやくキレイになり、今度は身体についた血を洗い流すと、ようやく湯船につかることができた。
1人で湯船につかっていると、考えてしまうのは壁外調査でのことだ。
医者の娘であるクレアは血を見ることに抵抗はない。むしろ、父親の手術の助手もしていた程だ。
だが、あんなバラバラになった遺体や転がった頭部を見るのは初めてで、一瞬でも戸惑った自分の未熟さがとても歯がゆく感じた。
巨人の討伐に関しては戦績を残せるほどの結果を出せたのだ。
次回の壁外調査では、どんな被害がでても冷静に対処したい。1人でも多くの兵士の命を助けたい。
クレアは同じ悔しさを二度と味あわないようにと改めて気持を引き締めた。
明日と明後日は特別休暇だ。
急に2日も休みをもらっても、特にすることはなかった。
しかし、休みが明ければまた厳しい訓練が再開なのだ。
何か特別にやれることはないだろうかと考えながら、クレアは疲れがとれるまで湯の中で温まっていた。