第11章 奇行種の初陣
「クレアの気持ちはわかるよ。でも、いいんだよ。近い未来死ぬ運命にある私達だって人間だ。死にたくないと思うのも当然だし、兵舎内で親しいヤツがでてくれば当たり前の感情だ。だからクレアはそんなことで悩まないで。」
「ハンジさん……」
「私達にできるのは彼らの死を無駄にしないことだ。次に繋げられるように、戦い続けよう。それが唯一の償いだよ。クレアの持ってる力は、それができる。」
ハンジの言っていることは正しい。
死んでいった彼らのためにも、自分がこんなところで止まってしまってはいけない。
次回の壁外調査も必ず討伐をして、生きて帰還しよう。
クレア固く心に誓った。
「はい…ありがとうございます。ハンジさんのおかげで、胸のつかえが取れました。」
はにかむように笑ったクレアの目に、もう涙はなかった。
「それにしてもリヴァイのあの動揺っぷりには驚かされたねー!!」
「…………。」
そうだ。
そういえば、クレアは先程リヴァイから怒鳴られていたのを思い出した。
人類最強のリヴァイの安否を新兵の自分なんかが心配するなどおこがましいことだと思っていたが、想い人の無事を確認したいのは当たり前のことだ。
そう思っていた矢先にまさかの名前を呼ばれ、胸が高鳴ったと思ったらあの形相。
なぜ怒っているのか確認もできないままエルヴィンに連れて行かれてしまったので、クレアは今にいたるまでリヴァイの怒りの原因が、わからず終いであった。
「本当は笑いたかったんだけどさー、リヴァイも素直じゃないから、機嫌損ねてこじらせちゃいけないと思ってさー。もう我慢するのに必死だったよ!」
「……リヴァイ兵長はなんであんなに怒ってたのでしょうか…?ちょっと怖かったです…」
「……え??えーと、クレアはリヴァイが怒ってると思ってたの?」
「は、はい……えーと、違うんですか?」
ハンジは軽く途方に暮れた。
色恋沙汰にはにぶいと思ってはいたが、ここまでこじらせ女子だとは思っていなかった。
リヴァイもリヴァイであの性格だ…
クレアに対する気持ちを持て余してるに違いない。
この2人が結ばれるまでにはまだまだ遠回りしそうだなと確信すると、珍しくハンジは疲労感を覚えた。