第79章 海を見に行こう!
「香り…??」
エレンに言われるまで感じなかったが、意識して辺りの匂いを嗅ぐと、微かだが、今まで感じた事の無い香りが鼻の奥を刺激した。
「な、なんでしょう…この香りは…」
「さぁ…なんか…苔っぽくないか…?」
「…苔…確かに……」
すっきりとよく晴れた空の下で苔の匂いとはおかしな表現だが、どことなく湿っぽいような、青臭いような…それはそれはなんとも形容しがたい香りだった。
その苔のような香りは進めば進むほど強くなる。
本当に、本当にあるのだろうか…
アルミンが昔本で見たという巨大な塩の湖…
この先まで行けば見れるのだろうか…
「あっ……!!」
小高い丘まで馬を走らせると、目に飛び込んできた景色に皆一斉に言葉を失った。
それは“巨大な湖”などという言葉では到底足りない。
まるで空が大地にひっくり返ったのではないかと思う程の壮大な青い景色だった。
「これが…海なの?!」
「ハンジさん…これが海です……」
ポツリと呟いたハンジにエレンが答える。
本当に海は存在していた。
「す、す、すっげーーーーー!!!海だぁぁぁ!!」
ハンジは両拳を上げて叫ぶと、猛スピードで丘を降りて行った。
「あっ!!ハンジさん!待って下さい!!」
皆も後に続き丘を降りると、地面はサラサラの砂地になっている。
「なんだこの砂は!!アハ!アハハハ!!上手く歩けなーい!!」
ランティスからおりたハンジは海に向かって走り出したが、サラサラの砂に足元を取られてうまく歩けず、何度も転んでいた。