第11章 奇行種の初陣
これで小規模な被害となると、大規模な被害とはいったいどれほどの事態になってしまうのか…
クレアは考えただけでもゾッとした。
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治療の手伝いが一通り終わり、後片付けをしていたところで声をかけられた。
「クレア!お疲れ!手伝いはもういいの?」
「あ、ハンジさん。お疲れ様です!こちらの治療は一段落しました。」
「そっか。こっちの方もだいたい終わりだから、立体機動装置の点検が終わったら、クレアも今日は上がりでいいんだけど……」
珍しくハンジが口ごもっている。
「ハンジさん?」
「ねぇ、ちょっといい?」
「は、はい。」
ハンジさんが、かしこまってどうしたんだろう。
2人は近くのベンチに並んで腰掛けた。
「まずは無事帰還おめでとう!そして初陣なのに、討伐2体、討伐補佐1体、見事な戦績だったよ。」
「あ、ありがとうございます…自分が生き残るのに必死で…戦績なんて考えてませんでしたが…」
「それと、今回新兵が何名か亡くなったけど…その、クレアの気持ちは大丈夫?」
「あ…はい…多分、大丈夫です。でも…でも…」
「クレア?」
「あの…私、壁外調査の前は自分が生き残るのに必死でした。きっと自分のことで精一杯で、たくさんの人が死ぬことなんて考えてなかったんです…でも、救援に行って、遺体の残骸と血の海を見たときに思ったんです。」
「………………。」
「遺体の顔が、フレイアでなくてよかったって…思っちゃったんです……それと同時に、自分でなくてよかったって……次は自分の番かもしれないのに、最低ですよね私……遺品を班長に渡したのも、彼らへの申し訳無さからです……」
クレアは心の中でひっかかっていた想いを話すとポロッと涙がこぼれた。
「クレア、私は、クレアが無事に帰還してくれてよかったと思ってるし、ホッとしている。私自身も生きて帰ってこれたことをよかったと思っているよ。どう?こんな私は最低かい?」
「そ!そんなことありません!」
クレアはおおきくかぶりを振った。
「アハハハ、じゃあ私とクレアは一緒だよ!」
ハンジはクレアを撫でるとギュッと肩を抱いた。