第11章 奇行種の初陣
……少し冷静になって周りを見ると、ミケがフンと鼻をならしながらこっちを見ている。
何か言いたげだ…
ハンジは一見真顔に見えるが腹をおさえてヒクヒクしてやがる。きっとこんな慌てた自分を笑いたいのだろうか。
クソメガネが……
ため息をつきながら後ろを振り返ってみると、自分と目を合わせようとしない班員と、なぜだかエルヴィンが立っていた。
「エルヴィン?何の用だ……」
「あ、あぁ。医師が負傷兵の治療に手一杯だそうで、クレアを借りたいそうなんだが……今は取り込み中だったか?」
顔は大真面目だが、口元はかすかにと緩んでやがる…
クソッ……
「いや、大丈夫だ…」
リヴァイはバツが悪そうに両肩に置いた手をどけた。
「クレア、デイジーは私とモブリットでやっておくから、先生の手伝いに行っておいで。」
「は、はい。ハンジさん、お願いします。」
「おいお前ら。馬の手入れが終わったら立体機動装置の点検だ。急いで終わらすぞ。」
「「「はい…」」」
エルヴィンがクレアを連れて行ったあと、不機嫌に班員に命令をすると、そのまま誰とも話そうとはしなかった。
話しかけるなオーラをビリビリ発していたため、誰も話しかけることはしなかったが、みな考えてる事は一緒だった。
──リヴァイはクレアに気がある──
かねてからそう思っていたミケもハンジもエルヴィンも、先程の一瞬で確信をしただろう。
一方のリヴァイは、らしくもなく感情を出したことを盛大に後悔した。
もしかすると、クレアをただの新兵として見ていないことがバレたかもしれない。
もう終始無言を決めこむしかなかった。
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クレアは医師の指示に従い負傷兵の手当をしていた。人数は多いが、みな軽症だったのが幸いだ。
左翼側にいた負傷兵に聞いた話だと、帰還途中、運悪く奇行種が数体現れ、犠牲がでたとのことだった。
紫の信煙弾でリヴァイ班が救援に来たため、陣形が崩れることはなかったが、新兵含む数名が亡くなった。
拠点の往復だけでもこれだけの犠牲がでた。
クレアはそう思っていたが、新兵の初陣だったにも関わらず、今回の被害は小規模の方に入ると医師から聞きクレアは驚いた。