第77章 自称・約束を守る誠実な男
「へ、兵長の意地悪な発言も…真面目な顔も…真剣な気持ちも…全部全部全部…!!私の心を揺さぶるんです。いっつも私はドキドキさせられて、振り回されてばっかりで…本当に…!ズルイです!!」
「オイオイオイオイ…なんでそうなるんだ奇行種。言ってる事とやってる事が随分違うが、ちゃんと気づいてんのか?」
「え……?」
絶句だと言わんばかりに深いため息をついたリヴァイは、呆れたように突っ込みを入れるが、クレアはポカンと口を開けている。
本当にわからないようだ。
「心の中を引っ掻き回されてんのはお前ではなく俺の方だ…!この潤んだ瞳はなんだ…俺には物欲しそうにねだってるようにしか見えねぇ。それに、力無く抵抗するその仕草はなんだ。襲ってくれと言ってるようにしか見えねぇんだよ。それと、このキンモクセイの香る長い髪はなんなんだ…俺の情欲にイタズラに火をつけて…滅茶苦茶にしてくれと言ってるのか?」
「そ、そんな…私は……」
「俺からしてみればお前の方がズルイな。お前の目も、唇も、細い身体も、長い髪の毛も…いつだって遠慮の欠片もなく俺の理性をぶっ壊しにくる。しかも全て無自覚ときている。それでも冷静でいろという方がおかしい…拷問だろ…お前の存在そのものが常に俺の理性を壊そうとしてるんだ。それと比べたらお前の“振り回されてる”なんざ、爪の先程の小さな出来事だ…」
「そんな事ありません!爪の先よりは大きいです!!」
「どうだかな…」
お互いがお互いどれだけ自分が振り回されているのか主張し合うというなんとも滑稽な光景だが、本人達はいたって真面目だ。
しかし、ここはいつも無自覚で鈍感な奇行種に分が悪そうだ。