第77章 自称・約束を守る誠実な男
今の調査兵団には見知った顔の極少数の人間しかいない。
ではいったい誰が……
逃げなくてはならない状況になっても、クレアは今までのような身体能力はないのだ。
走って逃げる事はできない。
心拍数が上がり冷汗が出る。
ベッドの上から動けずに固まっていると、扉がゆっくりと開く。
「……………」
勝手に息が上がって、クレアの緊張は最高潮になり軽く目眩を起こしかけたのだが…
「……なんだ…まだ起きていたのか?」
「……えぇ?!兵長…です…か?」
カギを使って入ってきたのは、リヴァイだった。
「ど、どうして兵長が私の部屋のカギを持ってるんですか?」
一般兵士の自室のカギの予備は団長の部屋で管理をされている。
となると考えられるのは…
「このカギか?ハンジに酒瓶をチラつかせたら気前よくくれたからな。ありがたく頂戴したまでだ。何か文句あるか?」
やはり犯人はハンジだった。
「はぁ……ハンジさん……で、ですが兵長、こんな時間にいったいどうされたんですか?」
そう、リヴァイはいったい何しに来たのだ。
わざわざハンジからカギをくすねてまでここに来る理由とは…
いったい何なのだ。
「なんだよ、忘れたのかよ?」
「え?なんの事ですか…?」
「はぁ…この奇行種が…」
リヴァイはため息をつきながら、呆れたような顔をしているが、リヴァイを呆れさせる程の何をしたのだ。
思い当たる節がなく、クレアは首を傾げてしまう。
すると、リヴァイはコツコツと踵を鳴らしながらベッドに近づき、クレアの前に立つと顎を掴んで上を向かせた。