第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「うん…男の子でも女の子でも……きっと優しい子だよ。そしてこの子は、必ず君を守ってくれるはずだ。モブリットが…私達を守ってくれたように…ね?」
「…………」
照れ臭そうな笑顔で自分を見上げているのは、鏡合わせのようにそっくりな…ハンジの顔。
この子は愛しいモブリットの血を受け継いでいる。
そしてこの子の中でモブリットは生き続ける。
その言葉はストンとタリアの中に落ちて、まるで紅茶の中で溶ける角砂糖のように温かく心に染み込んでいった。
「はい…私も…そう思いたいです…モブリットは…この子の中で生き続けていると……」
「うんうん!!産まれたら…抱かせてね?」
「……はい!!」
「あ、あの…私も…赤ちゃん…抱っこしたいです!!…私も会いに来て、いいですか?」
「…勿論です!!」
入団してからずっと世話になっていたモブリットだ。
クレアだってタリアを応援したい気持ちはハンジと同様だった。
「私、まずは夜の仕事を辞めようと思います。今まで自分が生きてきた世界を否定するつもりはありませんが…母になる以上、身体を売る仕事は…卒業したいです…モブリットのためにも…」
「うん…タリアさんならできるよ。」
「はい…幸い仕立ての技術は叩き込まれているので…ここで昼間の仕事だけでも続けさせてもらえるように交渉してみます。」
タリアはモブリットの遺した手紙をギュッと抱きしめると、涙で頬を濡らしながらもニコリと笑って見せた。
その様子にハンジもクレアも一安心だ。
「よかった…困った事があったらいつでも調査兵団の兵舎に来て。」