第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「ありがとうございます…ハンジさんにクレアさん…モブリットの手紙を届けに来てくれて、本当にありがとうございました。」
タリアは両手を広げてハンジとクレアに抱きつくと、満面の笑みで涙を流した。
それにつられるようにハンジもクレアも涙を流す。
これは悲しみの涙ではない。
幸せに生きようという願いと、嬉しさから流れる涙だ。
その涙は溢れんばかりの希望に満ちていて、宝石のように光り輝いていた。
3人ともモブリットに寄せていた想いの種類は違えど、かけがえのない大切な存在だった事は確かだ。
そんな大切な命を継いだ子が、年が明けた頃に産まれてくる。
その子はタリアだけではなく、ハンジにとっても、クレアにとっても大切な存在になるだろう。
「ハンジさん…クレアさん、今日は本当にありがとうございました。また遊びにいらして下さい。今度は、ちゃんと別のお部屋を用意しますので…」
話が済んだ2人は、裏口までタリアに案内されて別れの挨拶を交わす。
「娼館なんて、入った事なかったから、いい人生経験になったよ!ありがとう!!」
「タリアさん、お身体に気をつけて下さいね…!!またハンジさんと一緒に伺いますので。」
ニッコリと笑顔で手を振るタリアにハンジとクレアは何度も振り返って手を振った。
モブリットはもうこの世にいない。
だが、モブリットが愛したタリアの中に宿った命が…3人を繋げてくれた。
奇跡のような縁を、大切にしたい。
そんな温かい気持ちでいっぱいになった2人は、来年産まれてくるタリアの子を楽しみにしながら仕立屋アイリーンを後にした。