第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
タリアへ
この手紙を君が読んでいるという事は、俺は既にもうこの世を去っているのだろう。
まずは、約束を守れず…すまなかった。
秋に満開になる向日葵畑を君と見に行こうと約束しておきながら戦死してしまうとは…
本当に申し訳ないと思っている。
こんな形で君に手紙を遺すかどうか、本当に迷ったんだ。
でも、2度と君に会うことができないのなら、最後にどうしても感謝の気持ちと、自分の素直な気持ちを伝えたくて、悩みに悩んだ結果、筆を取ることにした。
途中で嫌になったら読まずに捨ててくれてかまわない。
だからどうか、読めるところまで読んでくれると、嬉しい。
君と酒場で出会った時はそれはそれは驚いた。
まだ酒に口をつけたばかりなのにもう酔っ払ったのかと自身の頭を疑ったほどにだ。
こんな哀れな男の哀れな欲望に散々付き合わせてしまって本当にすまなかった。
せっかくキレイに仕上げてある化粧を落とさせて、髪の毛をボサボサにさせて…調査兵団の兵服まで着させて…
そんな俺の注文を、君は嫌な顔1つせずに…いつも優しい笑顔で受け入れてくれた。
そんな君の優しさのおかげで、俺の心は本当に救われたんだ。
本当に、感謝している。
そしてある日を境に、俺は想い人である上官と君を、重ねて見る事ができなくなった。
最初はこの気持ちが何なのかわからなかったが、今ならはっきりと言える。
俺はタリアの事が好きになっていたのだと…
そうしたら、自然と君のありのままの姿を見たくて、ありのままの君を抱きたいと思うようになった。
この気持ちを伝えようか、本当に悩んだ。
だから、もし生きて帰還できたら…君が好きだと言っていた向日葵が満開になっている花畑で、この想いを伝えようと思っていたんだ。